2024年11月2日土曜日

短歌  2024年7月

噴水が誰にも気づいてもらえない虹を作って泣いていたんだ




七夕の夜が明けたら雑踏がきみの吐息をかき消してゆく





俺たちの時代だったね信号がかわっても手を繋いでいたね




いつまでも記憶はぼくを縛りつけ日々透けてゆくため息のいろ




去って行くひとの背中を追いかける気力も溶けるソフトクリーム




この月もやがて飲み込まれるだろう永遠なんてつくり話さ




夏の雨。渡辺美里で満たされた屋根なき頃の西武球場




夏の夜ふいにつめたい風が吹き声も笑顔も過去形になる




ぼくたちはなぜ本音で話せないのだろう雨は激しくこの夏を問う




いい加減手放していい感情が机の上にまだ二、三枚




許されぬ恋だとしても夏空にきみのなまえが漏れてしまうよ




噴水を遠く眺めるだけで詩が降りてきたなら恋のはじまり