噴水が誰にも気づいてもらえない虹を作って泣いていたんだ
七夕の夜が明けたら雑踏がきみの吐息をかき消してゆく
俺たちの時代だったね信号がかわっても手を繋いでいたね
いつまでも記憶はぼくを縛りつけ日々透けてゆくため息のいろ
去って行くひとの背中を追いかける気力も溶けるソフトクリーム
この月もやがて飲み込まれるだろう永遠なんてつくり話さ
夏の雨。渡辺美里で満たされた屋根なき頃の西武球場
夏の夜ふいにつめたい風が吹き声も笑顔も過去形になる
ぼくたちはなぜ本音で話せないのだろう雨は激しくこの夏を問う
いい加減手放していい感情が机の上にまだ二、三枚
許されぬ恋だとしても夏空にきみのなまえが漏れてしまうよ
噴水を遠く眺めるだけで詩が降りてきたなら恋のはじまり