氷点下十五度の朝
きょうだけは粘土のように生きていたいよ
夕方のペットショップでまっしろな仔犬が西の空を見ていた
氷白の海は多くを語らずにぼくの青さを隠してくれる
あなたにはほかに愛するひとがいてぼくは雪道歩くしかない
行間を雪のあかりが照らすからぼくは金魚になれそうもない
ひとひらの雪の行方を追うように忘れられない恋があります
街灯のひとつひとつが寂しげな詩を紡いでる星に住んでる
No Woman, No Cryとは言えなくてガラスの欠けた夜をみていた
星の声聞こえるような夜なのにどうして忘れられないのかな
朝風呂に沈んでみれば浮遊する春の記憶は少しかなしい
北風が不意にやさしい顔になりシナリオにない恋がはじまる
あのひとに雪を届けてあげたくてぼくは死んだら雲になります
真夜中を自由に生きてみたいけど星のなまえが忘れられない
いつまでもチュートリアルのままでいい全てを知ればきっとさみしい
青空が背中を押してくれるから無理に大人にならなくていい
いつまでも雪降るわけでないけれど悲しいときは泣いていいよね
春だから変わらなければなどというそんなことないそのままでいい
血液がぼくのからだを離れゆくアンパンマンにぼくはなれない
青空に裏とおもてがあるのなら誰に本音を言えるのだろう
静寂を破る(お風呂が沸きました)夢はだいたい泡になります
川沿いのホテルの窓は冷たくてひとりぼっちがふたり居る部屋
雪解けの匂いが夜に染みついてさよならなんか言えるわけない
夕刻の羽田第一ターミナルどうしても手を離したくない
雪が降るもうすぐいなくなるのならもっと冷たくしてもいいのに
あの夜のアールグレイが透きとおる隙さえあれば好きと言いたい
どれだけの猫の動画をみてもなお取り戻せない夜があります
忘れると決めても忘れられなくて枯木に星は咲いていますか
いつまでも忘れたくない冬だけど雪が解けたら萌えるのでしょう
雪だった水が流れるアスファルトぼくだけ冬に取り残されて
告白は度胸があるか無いかだけ
しどろもどろのトペ・スイシーダ
夜までの距離がどんどん遠くなる春がふたりを惑わせている
儚げな色鉛筆が好きだったあなたの虹にぼくは居ますか
あたたかい日が増えてくる忘れたくないことばから淡く消えゆく
買ったきり一度も読まれないままに西日を浴びる老人と海
鎮痛剤飲んでしまえばきみのこと許せなくなる気がしちゃうんだ
街中の音を吸い込む雪のなか無言の窓がいま走り出す
三連休最後の空が泣きそうで時間を止めることもできない
感情がむき出しになる日曜の夜にあなたも泣いてるんだね
寝不足の朝は迷子になりたくて無口な鳩が集う公園
ぼくたちの距離を縮める術もなく花の季節が近づいている