凍える夜を溶かしながら
きみの軌道のままでいい
(2023年12月1日)
痛みのないことばだけ生き残る
氷点下八度の空の向こう側にも
(2023年12月2日)
奇妙な夢の余韻がざわめいて
きみが歌わないまま冬を追う
(2023年12月4日)
冬の迷い。あなたは余白を愛している
好きなだけことばを鳴らせられるんだ
(2023年12月5日)
午前五時が音を渇望するから
あらゆる夜を拾い集めている
(2023年12月7日)
あたたかい手の鳴るほうから
冬はしずかに歩き出している
(2023年12月10日)
雪が隠そうとしているものを
ぼくはまだあきらめていない
(2023年12月11日)
一年前と変わらないことばが
行き場のないままに凍りつく
(2023年12月12日)
雪の朝にはまだ慣れなくて
代わりに毛布を抱きしめる
(2023年12月13日)
雪に隠されてゆく街並みに刻まれた
架空の四季に音のない歌がながれる
(2023年12月14日)
ぼくだけが記憶の冬を捨てられなくて
きみはまた新しい歌を覚えたんだね
(2023年12月15日)
雪はやがて壊れる身体を重ねていく
記憶は体温に宿るしかないのだから
(2023年12月16日)
凍えた星が落ちてくる夜だから
それ以上は知らないままでいい
(2023年12月19日)
あなたの歌から満天の夜が降りそそぐ
変わってしまったのはぼくの方なのか
(2023年12月19日)
凍えた街を歩いてきみの面影
忘れることさえ許されなくて
(2023年12月20日)
雪はすべての音を奪い去り
伝えられない想いだけ残す
(2023年12月20日)