不思議な森に
紛れてしまい
角張った木に
阻まれている
ほかには誰も
いない世界で
ただ声だけが
満たされている
いつしか声は
大河となって
この森さえも
飲み込むだろう
消える記憶と
肌の感覚
抱きしめたまま
ここに眠ろう
(2025年2月7日)
天気予報に
置いてきぼりの
傘を並べて
二月の雨を
待っていたけど
煮詰めた嘘は
ずぶ濡れになり
こんぺいとうの
涙のように
消え入るような
声を落とした
来るはずのない
着信を待つ
夜の長さは
寂寞として
宛先のない
ことばはきっと
生まれる前の
月に似ている
(2025年2月12日)
哀しい駅に
火が灯る頃
ぼくはなんだか
中途半端に
いけないことを
知ってしまった
こどものようで
落ち着きのない
頬を濡らした
失うことに
怯えていても
失うことは
避けられなくて
大好きだった
ねこの置物
窓辺にならべ
風のしっぽを
鳴らせずにいる
(2025年2月14日)
崩壊しない
疾腺だから
季節はいつも
乾いたままで
笑った朝も
困った午後も
大地のように
湿り気がない
その裏側を
覗きたくても
虚像の書には
隙がみえない
それでもきっと
みえない夜に
紙ふうせんは
割れるのだろう
色を廃した
からっぽの部屋
耳を澄ました
やさしさが待つ
(2025年2月19日)
奪い去られた
ぼくの半分
元のすがたに
戻ることなど
あり得ないとは
わかっていても
真のこころは
真のからだに
宿るらしいと
少年たちが
言うものだから
花にならない
泡の記憶を
あつめた部屋で
淫らな爪は
少し尖って
少しふくらむ
(2025年2月24日)