2024年11月2日土曜日

七ならべ  2024年4月

駅舎が淡く
光り出すころ
遠い記憶が
近づいてくる
あの頃ぼくは
海賊王に
なれないことを
自覚していて
瑕疵ひとつない
紙ふうせんを
作ることだけ
考えていた
それが何かの
役に立ったか
ポストはいまも
赤らんだまま
(2024年4月2日)




どんよりとした
日々が続けば
白い音楽
聴きたくもなる
晴れないけれど
雨も降らない
午後の窓辺で
風もないのに
揺れるカーテン
均衡を得た
うたた寝のなか
とどく手紙が
沈黙を断つ
開いてみれば
八分休符が
ただ一つだけ
記されていた
(2024年4月23日)




誰も知らない
道をさがして
ただ闇雲に
歩きたかった
ぼくの地図には
色とりどりの
抜け殻だけが
記されていて
どの方角に
進んでみても
空虚な風に
吹かれるばかり
それでも星は
輝いてるし
羽さえあれば
なんとかなると
音の鳴らない
ウクレレ持って
人差し指の
旅をはじめる
(2024年4月29日)