2024年11月30日土曜日

七ならべ  2024年11月

雪の季節を
はじめる前に
すぐバレる嘘
ついてしまった
きみは黙って
きいていたけど
悟ったように
微笑んでたね
道はたちまち
昏くなるから
盗んだだけの
理屈ならべて
好きとか嫌い
論じてみても
こころの奥に
届きはしない
何を言っても
手遅れならば
ただ白い息
吐き続けよう
機械のように
樹海のように
(2024年11月19日)




あいまいなまま
季節は過ぎて
この体温が
誰のものかも
わからなくなる
静かな海に
愛想も尽きて
行くあてのない
嘘がはじまる
都合良いのは
お互いさまと
言ってはみても
自分ひとりが
秋の余白に
しがみついてる
だからといって
ひとりで踊る
わけにもいかず
読みかけの本
閉じてしまえば
そこにあるのは
にがい沈黙
受け入れるにも
排除するにも
逃げ道なんて
あるわけもなく
みぞれのままで
居られないなら
溶けない問いを
立てるしかない
(2024年11月20日)




季節を終えた
スタジアムには
ほんのり柔い
手が鳴らされる
今年の記憶
伸び切った影
苛立ちの痕
よころびの熱
すべて呑み込み
疾風となる
冬を呼び込む
おだやかな日に
置き場所のない
さびしさを着て
やがて来る春
思い浮かべる
来年もまた
この場所に来て
日々の隙間に
歓喜の星を
飾りたいんだ
(2024年11月23日)




来週からは
十二月だね
ガラスの瓶も
ひび割れてるね
青い軌跡の
季節もおわり
気が抜けていく
ぼくのてのひら
不埒な雪が
降りてくるまで
醒めた時間は
過ぎ去ってゆく
捜しものなど
何もないけど
ぼくのことばは
熱をもとめて
ただれ続ける
さまよう先は
あぶら粘土で
つくられた部屋
そこでいいから
眠らせてくれ
(2024年11月27日)




浮遊している
いくつかの嘘
深く沈んだ
無色の記憶
いのちの数に
増減はなく
どんな姿か
違ってるだけ
午前一時の
羽は薄くて
どこに行っても
逃れられない
欲望が背を
伺いにくる
(2024年11月28日)




愛で塗られた
セックスなんて
甘さしかない
ケーキみたいと
きみはあの夜
言っていたけど
雨がみぞれに
かわる季節は
どうも甘さが
物足りなくて
普段聴かない
歌を流して
実感のない
燭台になる
だれかに届く
予感ないまま
拗ねたひかりを
漏らしつづける
(2024年11月29日)