雪の季節を
はじめる前に
すぐバレる嘘
ついてしまった
きみは黙って
きいていたけど
悟ったように
微笑んでたね
道はたちまち
昏くなるから
盗んだだけの
理屈ならべて
好きとか嫌い
論じてみても
こころの奥に
届きはしない
何を言っても
手遅れならば
ただ白い息
吐き続けよう
機械のように
樹海のように
(2024年11月19日)
あいまいなまま
季節は過ぎて
この体温が
誰のものかも
わからなくなる
静かな海に
愛想も尽きて
行くあてのない
嘘がはじまる
都合良いのは
お互いさまと
言ってはみても
自分ひとりが
秋の余白に
しがみついてる
だからといって
ひとりで踊る
わけにもいかず
読みかけの本
閉じてしまえば
そこにあるのは
にがい沈黙
受け入れるにも
排除するにも
逃げ道なんて
あるわけもなく
みぞれのままで
居られないなら
溶けない問いを
立てるしかない
(2024年11月20日)
季節を終えた
スタジアムには
ほんのり柔い
手が鳴らされる
今年の記憶
伸び切った影
苛立ちの痕
よころびの熱
すべて呑み込み
疾風となる
冬を呼び込む
おだやかな日に
置き場所のない
さびしさを着て
やがて来る春
思い浮かべる
来年もまた
この場所に来て
日々の隙間に
歓喜の星を
飾りたいんだ
(2024年11月23日)
来週からは
十二月だね
ガラスの瓶も
ひび割れてるね
青い軌跡の
季節もおわり
気が抜けていく
ぼくのてのひら
不埒な雪が
降りてくるまで
醒めた時間は
過ぎ去ってゆく
捜しものなど
何もないけど
ぼくのことばは
熱をもとめて
ただれ続ける
さまよう先は
あぶら粘土で
つくられた部屋
そこでいいから
眠らせてくれ
(2024年11月27日)
浮遊している
いくつかの嘘
深く沈んだ
無色の記憶
いのちの数に
増減はなく
どんな姿か
違ってるだけ
午前一時の
羽は薄くて
どこに行っても
逃れられない
欲望が背を
伺いにくる
(2024年11月28日)
愛で塗られた
セックスなんて
甘さしかない
ケーキみたいと
きみはあの夜
言っていたけど
雨がみぞれに
かわる季節は
どうも甘さが
物足りなくて
普段聴かない
歌を流して
実感のない
燭台になる
だれかに届く
予感ないまま
拗ねたひかりを
漏らしつづける
(2024年11月29日)