2024年11月2日土曜日

二息  2024年10月

不意に冬の声をきく
クラリネットは嘘をつけない
(2024年10月8日)



ねがいごと散らかした公園に
はらはらと鐘の音が落ちてゆく
(2024年10月9日)



ぼくは何を忘れたいのだろう
空の底なんて知りたくなかった
(2024年10月10日)



月へとつづく駅前通
あきらめきれないぼくの足音
(2024年10月11日)



途切れた夢が逃げてゆく
見上げたらオリオンのとぼけ顔
(2024年10月13日)



秋の正体探し続けて
もう少しで読み終える本
(2024年10月13日)



もしも羽が生えてくるのなら
朝の木漏れ日が笑っている
(2024年10月14日)



過ちの流星に気付けないまま
ふたりは月あかりに許されていた
(2024年10月15日)



待たせるよりは待ちたくて
いくつ季節が過ぎたのだろう
(2024年10月16日)



街のすきまに枯草色の風が
増えてゆく未完のものがたり
(2024年10月17日)



照らされないところから
こころは秋を終わらせる
(2024年10月18日)



巻き戻せない色が溢れ出す
忘れて欲しくないと言えずに
(2024年10月20日)
 


駅までの一本道が濡れていた夜
くちびるはオリオンに続いていた
(2024年10月22日)



こんなに酔って月をさがす
本当の笑顔はどこにあるだろう
(2024年10月23日)



あなたがいつまでも微笑むから
ビル風は季節を見失なう
(2024年10月24日)



置き去りの月、置き去りの夜。
変わらない表情が溶けてゆく
(2024年10月25日)



青空に気を取られていた土曜の午後
観念の地下鉄がそろり発車していた
(2024年10月26日)



週末の安堵を見つけないまま
感情を捨てたピアノのアルペジオ
(2024年10月27日)