恋のおわりは
花火のようで
落ちる欠片を
目で追うばかり
醒めた体温
そのままにして
傷つけられた
地図をひろげる
たいせつな腕
そっと仕舞って
春はやさしい
顔をしている
(2023年3月1日)
ブラウン管が
窓だったころ
土曜の夜は
笑っていたね
多様化なんて
ことばもなくて
おなじ匂いを
感じていたね
あのナショナルが
パナソニックと
名乗る未来に
気づきもせずに
今はだれもが
手のひらを見て
匂いもしない
知恵を重ねる
(2023年3月2日)
雪が溶ければ
忘れたはずの
きたないものが
晒されるから
春はうららに
シートを広げ
だいじな影に
呑み込まれゆく
(2023年3月4日)
季節を終える
作法を知らず
ただ闇雲に
爪立てている
最後のうたを
奏でたあとは
空になるだけ
(2023年3月5日)
朝はいつでも
強引だから
そらがだんだん
明るくなれば
からだの芯を
揺らそうとする
春がもたらす
出会いと別れ
夕べのことを
ひきずったまま
ぼくひとりだけ
取り残されて
朝のほっぺを
直視できない
(2023年3月12日)
今年最初の
雨に打たれる
ぽっかり空いた
胸を目がけて
ことばのように
つよい痛みが
あちらこちらに
現れてくる
泣いてることも
忘れた夜に
歩いて帰る
真っ暗な部屋
(2023年3月13日)
窓をあけても
もう寒くない
そんな油断が
花をころした
ぼくは寂しい
霧につつまれ
記憶のなかの
グレート・ムタが
毒をうしなう
(2023年3月14日)
春が坂道
のぼりはじめた
その襟首が
何色なのか
わからないまま
コートをしまう
坂をのぼって
見える景色は
ひとりで見ても
ふたりで見ても
鈍い痛みは
伴うだろう
(2023年3月15日)
最初はきみを
見ているだけで
しあわせだった
いつの頃から
きみの未来を
知りたくなって
ぼくは背伸びを
知ってしまった
きみが見ている
ぼくの姿は
記憶の中の
ぼくじゃないはず
だけど今でも
きみのことしか
見えてないんだ
(2023年3月15日)
星のなみだは
こわれるために
つくられるから
生まれたままの
不安なきもち
受け止めたまま
星のなみだを
みつけた夜は
もう折れそうな
恋が旅立つ
(2023年3月16日)
道を流れる
雪だった水
姿変われば
想いも変わる
春には春の
風が吹くけど
流れる水は
雪だった日を
思い起こして
ぼくに染み込む
(2023年3月17日)
あなたの声を
待ち続けても
沈黙の木は
無遠慮なまま
部屋に根を張り
時を貪る
鳴らない電話
壁に投げつけ
今日、はじめての
音におどろく
(2023年3月18日)
ことばの中に
声をみつけて
叶わなかった
恋呼び起こす
あの時吐いた
ことばの陰に
いつまでも居る
そろそろページ
捲らなければ
朝が来ないと
わかっていても
愛しい文字が
震えてるから
まだここからは
動けないんだ
(2023年3月19日)
羽田に向かう
飛行機の尾が
みえなくなれば
届かない手が
残される夜
星の向こうに
伝えようにも
ことばはいつも
踊りもせずに
着飾ったまま
そろそろ風が
泣き止む頃だ
(2023年3月20日)
あかるい窓が
外へと誘う
気づけば雪も
ほとんど解けて
ぼくの季節は
終わったと知る
冬のあいだに
あたためられた
そのあたたかさ
手放したから
北の町にも
春が来たんだ
ぼくにつながる
すべての人に
届いて欲しい
永遠の午後
(2023年3月21日)
そちらは花が
咲くころですね
春の陽気を
見てみたいです
こちらは今も
雪が残って
氷点下にも
なったりします
距離があるから
もどかしいけど
いろいろなこと
話したいです
ぼくの世界と
あなたの世界
きっと違って
おもしろいから
ぼくのところに
花が咲くころ
今よりすこし
近づけるかな
(2023年3月22日)
名前を付けて
保存するから
いつになっても
忘れられない
だからといって
上書きできず
消去もできず
ムカつくくらい
しあわせでした
(2023年3月23日)
書いていないと
潰されそうで
夜が来るのも
気づかないまま
ぼくのことばは
魔法ではなく
媚薬でもない
がらくたばかり
夜店の隅で
だれの目にも
留まることなく
夜に溶けゆく
夜そのものは
媚薬だけれど
ぼくのからだは
影だけになる
(2023年3月24日)
三年ぶりに
訪れた町
残したはずの
足跡もなく
通った店の
跡形もない
時の経過は
身勝手だけど
ぼくの想いも
身勝手だから
解き放たれて
消えゆく影に
せめて笑顔で
いられたらいい
もう戻らない
背中が沈む
(2023年3月25日)
ジャスミンティーの
香りにむせて
春の海辺が
あたたかかった
あまりに長い
季節のあとは
軌道は二度と
交わることを
許されなくて
今年はどこで
花になるのか
解けない問いが
対流を生む
(2023年3月26日)
春がきたのに
まだ雪が降る
これから巡る
季節のすみで
伝えきれない
想いのかけら
みつけて欲しい
夏の雪なら
なみだのように
麦わら色に
弾けるでしょう
(2023年3月28日)
破れた地図の
片隅にある
ちいさな町で
足が止まった
公民館と
セイコーマート
あとはひたすら
春のため息
なだらかな坂
登った先の
空の広さに
たいせつなもの
盗られないよう
きみだけが呼ぶ
ぼくの名前を
風に刻んだ
(2023年3月29日)
雲のすきまが
見えはじめたら
淡い音楽
部屋に流そう
消え入りそうな
声やすがたを
編み込むように
窓に映そう
めぐる季節に
追われるように
生きてきたけど
立ち止まりたい
ときもあるから
動画ではなく
静止画で撮る
夕焼けの海
(2023年3月30日)恋のおわりは
花火のようで
落ちる欠片を
目で追うばかり
醒めた体温
そのままにして
傷つけられた
地図をひろげる
たいせつな腕
そっと仕舞って
春はやさしい
顔をしている
(2023年3月1日)
ブラウン管が
窓だったころ
土曜の夜は
笑っていたね
多様化なんて
ことばもなくて
おなじ匂いを
感じていたね
あのナショナルが
パナソニックと
名乗る未来に
気づきもせずに
今はだれもが
手のひらを見て
匂いもしない
知恵を重ねる
(2023年3月2日)
雪が溶ければ
忘れたはずの
きたないものが
晒されるから
春はうららに
シートを広げ
だいじな影に
呑み込まれゆく
(2023年3月4日)
季節を終える
作法を知らず
ただ闇雲に
爪立てている
最後のうたを
奏でたあとは
空になるだけ
(2023年3月5日)
朝はいつでも
強引だから
そらがだんだん
明るくなれば
からだの芯を
揺らそうとする
春がもたらす
出会いと別れ
夕べのことを
ひきずったまま
ぼくひとりだけ
取り残されて
朝のほっぺを
直視できない
(2023年3月12日)
今年最初の
雨に打たれる
ぽっかり空いた
胸を目がけて
ことばのように
つよい痛みが
あちらこちらに
現れてくる
泣いてることも
忘れた夜に
歩いて帰る
真っ暗な部屋
(2023年3月13日)
窓をあけても
もう寒くない
そんな油断が
花をころした
ぼくは寂しい
霧につつまれ
記憶のなかの
グレート・ムタが
毒をうしなう
(2023年3月14日)
春が坂道
のぼりはじめた
その襟首が
何色なのか
わからないまま
コートをしまう
坂をのぼって
見える景色は
ひとりで見ても
ふたりで見ても
鈍い痛みは
伴うだろう
(2023年3月15日)
最初はきみを
見ているだけで
しあわせだった
いつの頃から
きみの未来を
知りたくなって
ぼくは背伸びを
知ってしまった
きみが見ている
ぼくの姿は
記憶の中の
ぼくじゃないはず
だけど今でも
きみのことしか
見えてないんだ
(2023年3月15日)
星のなみだは
こわれるために
つくられるから
生まれたままの
不安なきもち
受け止めたまま
星のなみだを
みつけた夜は
もう折れそうな
恋が旅立つ
(2023年3月16日)
道を流れる
雪だった水
姿変われば
想いも変わる
春には春の
風が吹くけど
流れる水は
雪だった日を
思い起こして
ぼくに染み込む
(2023年3月17日)
あなたの声を
待ち続けても
沈黙の木は
無遠慮なまま
部屋に根を張り
時を貪る
鳴らない電話
壁に投げつけ
今日、はじめての
音におどろく
(2023年3月18日)
ことばの中に
声をみつけて
叶わなかった
恋呼び起こす
あの時吐いた
ことばの陰に
いつまでも居る
そろそろページ
捲らなければ
朝が来ないと
わかっていても
愛しい文字が
震えてるから
まだここからは
動けないんだ
(2023年3月19日)
羽田に向かう
飛行機の尾が
みえなくなれば
届かない手が
残される夜
星の向こうに
伝えようにも
ことばはいつも
踊りもせずに
着飾ったまま
そろそろ風が
泣き止む頃だ
(2023年3月20日)
あかるい窓が
外へと誘う
気づけば雪も
ほとんど解けて
ぼくの季節は
終わったと知る
冬のあいだに
あたためられた
そのあたたかさ
手放したから
北の町にも
春が来たんだ
ぼくにつながる
すべての人に
届いて欲しい
永遠の午後
(2023年3月21日)
そちらは花が
咲くころですね
春の陽気を
見てみたいです
こちらは今も
雪が残って
氷点下にも
なったりします
距離があるから
もどかしいけど
いろいろなこと
話したいです
ぼくの世界と
あなたの世界
きっと違って
おもしろいから
ぼくのところに
花が咲くころ
今よりすこし
近づけるかな
(2023年3月22日)
名前を付けて
保存するから
いつになっても
忘れられない
だからといって
上書きできず
消去もできず
ムカつくくらい
しあわせでした
(2023年3月23日)
書いていないと
潰されそうで
夜が来るのも
気づかないまま
ぼくのことばは
魔法ではなく
媚薬でもない
がらくたばかり
夜店の隅で
だれの目にも
留まることなく
夜に溶けゆく
夜そのものは
媚薬だけれど
ぼくのからだは
影だけになる
(2023年3月24日)
三年ぶりに
訪れた町
残したはずの
足跡もなく
通った店の
跡形もない
時の経過は
身勝手だけど
ぼくの想いも
身勝手だから
解き放たれて
消えゆく影に
せめて笑顔で
いられたらいい
もう戻らない
背中が沈む
(2023年3月25日)
ジャスミンティーの
香りにむせて
春の海辺が
あたたかかった
あまりに長い
季節のあとは
軌道は二度と
交わることを
許されなくて
今年はどこで
花になるのか
解けない問いが
対流を生む
(2023年3月26日)
春がきたのに
まだ雪が降る
これから巡る
季節のすみで
伝えきれない
想いのかけら
みつけて欲しい
夏の雪なら
なみだのように
麦わら色に
弾けるでしょう
(2023年3月28日)
破れた地図の
片隅にある
ちいさな町で
足が止まった
公民館と
セイコーマート
あとはひたすら
春のため息
なだらかな坂
登った先の
空の広さに
たいせつなもの
盗られないよう
きみだけが呼ぶ
ぼくの名前を
風に刻んだ
(2023年3月29日)
雲のすきまが
見えはじめたら
淡い音楽
部屋に流そう
消え入りそうな
声やすがたを
編み込むように
窓に映そう
めぐる季節に
追われるように
生きてきたけど
立ち止まりたい
ときもあるから
動画ではなく
静止画で撮る
夕焼けの海
(2023年3月30日)