2024年11月2日土曜日

七ならべ  2022年10月

季節の罠に
追い詰められて
ずぶ濡れの夜

冷たい指を
そのままにせず
歩幅合わせる
(2022年10月18日)




かもめ鳴く町
街灯に沿い
感情を削ぐ
伝えるわけに
いかない想い
見透かしている
月が昇った
(2022年10月19日)




見てはいけない
笑顔に出会う
ことばは辞書を飛び出して
衝く
青信号に
待ち伏せる獏
(2022年10月21日)




夜を引き裂く
鹿の鳴き声
もう雪が降る
正しさなんて
測れないから
さかさまの絵を
指は求める
(2022年10月23日)




根雪の道は
遠くなるから
溜息が散る

硬い季節に
ことばを置いて
ぼくの微熱が
伝わればいい
(2022年10月25日)




ベテルギウスが
消え去った日に
星を結んだ
声が千切れて
ぼくの名前が
巨人の目から
こぼれ出てくる
(2022年10月28日)




俯くたびに
夜が生まれる
やがて町中
夜で溢れる
細いぬくもり
漏れないように
手を差し伸べる
(2022年10月31日)